スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)/辻村 深月

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スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)/辻村 深月

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これはすごい!!
ひさびさに鳥肌の立つ作品に出会えた。
やはり、これがあるから読書はやめられない。

デビュー作から、辻村氏の展開のうまさ、文章の美しさは評価していたつもりだったが、作を重ねるにつれ、ますます磨きがかかっていると思われる。

赤羽環という脚本家が譲り受けた元旅館の建物に
その友人や仕事を通じた知り合いを住まわせる。
ほとんどの住人が何らかのクリエーターであり、
スロウハイツと名付けられたその住まいは、かのトキワ荘を思い起こさせる。

物語は赤羽環の友人であり、漫画家の卵である狩野壮太を中心に
様々なその住人の視点で描かれ、ある意味淡々と進んでいく。

ちょっとした謎はあるものの、あまりミステリらしくはない。
しかし、最後まで読み終えたとき、その構成の見事さ、伏線の回収の仕方に舌を巻き、上質なミステリであったことに気づかされるだろう。

2年前の作品ではあるが、こういう作品こそ本屋大賞に相応しい気がする。