花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)/深水 黎一郎

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第10回本格ミステリ大賞候補作

デビュー4作目にして、本格ミステリ大賞候補作に入るとは、
それだけでもすばらしい。

芸術とは縁遠い私も、シャガールの作品は昔から好きだった。
以前、大分に旅行に行った際、たまたま見かけたシャガールの美術館にも寄った。
中学の頃、その作風を真似て、スクラッチングの作品を作ったこともある。
当然、単なる落書きのようになってしまったが。

だから、本作はシャガール、そして、ステンドグラスの蘊蓄だけでも十分に楽しめた。

さて、本筋のミステリとしてはどうか。

ランス大聖堂で起きた2つの死。
一方は事故死、もう一方は病死と思われた。
それはシャガールのステンドグラスの呪いだという。

もちろん本作はれっきとした本格ミステリであり、
呪いは論理的に解明される。

しかし、舞台の壮大さの割に、その解決の驚きは残念ながら小さい。

そして、私は気付くことが出来なかったが、
この作品の裏に隠された縛りとも言うべき作者の意図が存在する。
多分、その意図こそが、本作を本格ミステリ大賞候補作とさせたのだろう。
確かに、驚嘆に値する縛りではある。
だが、それが本格ミステリとしての面白さを高めているのかどうか。。。
私はやや懐疑的である。