ペガサスと一角獣薬局/柄刀一

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第9回本格ミステリ大賞候補作

柄刀氏の作品に探偵として登場する南美希風の短編集である。
「世界の伝説と奇観」という企画のカメラマンとして赴いた地で事件が起こる。

ドラゴン、ペガサス、ユニコーン。
こういた幻想的な伝説の生き物たちと
ミステリをうまく融合し、
非日常から日常への着地を試みている。

そして、舞台をヨーロッパとしていることも
この作品の幻想性を高めていると言えるだろう。

短編であるが故に、やや解説めいた感じになってしまっていることが残念であるが。
よく構成の練られた本格ミステリである。
造花の蜜/連城 三紀彦

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第9回本格ミステリ大賞候補作

連城氏らしい美しい物語であり、文章である。
誘拐物らしく、非常にエキサイティングで、アクロバティックなストーリー展開となっており、ページをめくる手を休ませることはない。
そして、奇妙に見える誘拐劇の真相が明かされたときの驚愕は大きい。

しかし、最後のエピソードがやや蛇足の感は否めない。
そこがないと伏線が全て回収できないというのは分かるのだけれど。

本格ミステリ的要素は見られるものの、
大賞となると少し弱いかもしれない。
見えない人影―各務原氏の逆説 (トクマ・ノベルズ)/氷川 透

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今度はサッカー部で事件が起こる。
そして、無気力なサッカー部マネージャー暮林晴海を一人称として物語は進行する。

大事な大会を前にして、ストライカーが死体となってみつかり、
またもや、友人であるサッカー部員たちは、
事件の真相を探り始める。
そして、得られた目撃証言。
それによって事態はさらに進展してしまう。

事件を解決するのはやはり各務原氏である。
用いられているトリックは本格ミステリの王道。
それだけにインパクトはやや弱いかな。

リアリティが足りないのは前作に引き続きだが、
2作を読んでみて感じるのは
たぶん氷川氏は狙って書いているんだろうなということ。

本格ミステリって言うのはこういうものでしょと。
各務原氏の逆説
氷川 透

ミステリ界から、氷川氏の姿が消えてからもう2年くらいになりますね。
作品としては4年くらい出てないのかな。
いろいろと事情はあったようですが、
是非よい作品を携えて復帰して欲しいものです。
大好きな作家の一人ですから。

軽音楽部の部室での、部員の死。
事件か、事故か。
軽音楽部員たちは真相を探ろうとするが。。。
風変わりな用務員・各務原氏が探偵役、
そして、生徒がワトソンという感じだろうか。

ロジックとしてはスマートだし、
軽い学園ミステリとしてはいいんじゃないかと。
ただ、私は普段ミステリにリアリティは求めていないんだけど、
それにしても、この物語の生徒たちは、
友人の死に対して、あっさりしすぎている感じはしてしまいますね。

でも、もしかすると親友ではない、単なる友人とのつながりって
こんなもんなのかもしれませんね。


硝子細工のマトリョーシカ
黒田研二


作中作好きとしては、たまらない設定。

作中劇中劇?

人気アイドルの死、弟の後追い自殺。
そして、1年後そのアイドルの死をモデルにしたかのような生放送のテレビドラマが放映される。
その裏では脅迫状が送りつけられ、生放送中に次々と事件が起こる。
その事件はドラマの筋書き通りなのか、それとも実際に起きているのか。
現実と虚構が入り交じり、物語は怒濤の展開を見せる。

タイトル通り「マトリョーシカ」のような物語。

なかなか痺れました。